タイトルのRational Optimistは、2010年にイギリスの科学ジャーナリストMatt Ridleyの出した同名の著作に由来する。事実を素直に見る。徹底的に合理的に考える。無用に悲観論に傾かない。そういう姿勢をこの本から学んだような気がする。

この精神を軸に、いろいろなことを考えて書いていきたいと思う。

手始めに、今日2018年8月2日の日経新聞から。Financial TimesのRana Foroohar(ラナ・フォルーハー)のコラム「米民主、台頭する新世代」を取り上げよう。記事は、ミレニアル世代の民主党議員、オカシオコルテスが新しい「民主社会主義者」として民主党の顔になりつつある背景を綴っている。オカシオコルテスの批判「民主党は、働く人々のために大望を掲げることもなく、力を尽くして戦ってもこなかった」は新鮮だ。2016年の米大統領予備選ではバーニー・サンダース候補を応援、格差を示す数字を次々に並べたてた。「この結果、その怒りが大統領選で共和党(トランプ氏)に投票する流れをつくってしまった」という自己分析は冷静で的確。たしかにトランプ支持者の多くは労働者階級であるように見える。彼らは本来労働者の党である民主党支持すべきなのに、そうしなかった。彼らのための党にもどるという原点回帰の運動の象徴がオカシオコルテスだとRanaは指摘する。国民を消費者として見るのではなく一般市民として気に掛け、全国民に医療保険と教育と生活可能な所得を補償する国を目指す民主党に立ち返ろうとする運動。米民主党の重鎮は、このミレニアル世代の「社会主義者」たちの台頭を不安視しているらしいが、経済成長より社会の安全網と格差縮小を優先するのは欧州的な視点では当たり前とアメリカ人であるRana は指摘する。

オバマの政策がトランプを生んだという人がいるが、実は背景にアメリカが新しい民主社会主義的な方向に舵をきる大きな底流があるのかもしれないと思わせる記事だ。